【立つ男、跡を濁さず】

【印西写真部】

最近、思ったことを口にしてしまうことが増えた。言わずにはいられないのか、あと先を考えず口走ってしまう。トラブルの元になり得るし、くだらない争いは御免なはずなのに。

例えば先日、とあるカフェでのこと。注文をして私が商品受け渡し口で待っていたところに、食事終えた若い子が食器を持ってきて商品受け渡し口に置いた。すぐ隣に返却口があるのになんで?と疑問に思っていたら奥で店員さんが私のアイスコーヒーと軽食をトレーに準備していた。さあ出てくるぞと思った矢先、もう一度若い子が使用済みの食器(トレーにはゴミが山盛り)を置きにきた。間髪いれずに「返却口はこっちだよ」と注意してしまった。私は普段通りの口調で伝えたつもりだったが、その子はひどく不機嫌そうな顔で私を一瞥して立ち去ろうとした。そうだよね、知らないヤツに注意されたら誰もがそうすると思う。また要らぬ一言を発してしまった、、次の瞬間、私は打ちのめされた。その子はすぐに振り返り、私に「すみません。間違えてここに置いてしまいました。すみません。」と言い放った。

もちろん勝ち負けの話ではないが、私は負けた感は否めなかった。私の食事が置かれる場所に使用済みのトレーが置かれることに嫌悪感丸出しにして注意をした。その子に悪意はないだろうし、ただうっかり間違えただけ。しかもすぐに自分の非を認め、謝りに来た。周りに他のお客さんもいるシチュエーションだったからそのまま退店してもおかしくない。もし、その子が虫の居どころが悪く突拍子もないことを言ってきたら口論になっていたかもしれない。拳には拳で返すぜ、かかってこいよ!私のそんな魂胆とは裏腹に、真摯な相手の対応に感謝したいほど自分が恥ずかしかった。

では、言わずに我慢した場合の私のフラストレーションはどうだろう。私が言わなくても店員さんが手際良く片付けただろうし、その場だけでおさまる感情だったのは間違いない。でも心地良い時間を過ごすカフェ気分ではなくなっていたはずだ。無意味なコーヒータイムを過ごすならわざわざカフェには入らない。

しかし、荒波にもまれるような激動は私の人生計画にない。カメラにフィルムを装填する時のように慎重にひっそりと暮らしたい。

立つ鳥、跡を濁さず。平穏を愛し、静寂を好む。そうだ、寡黙な男になろう。

Nikon Zf /voigtlander NOKTON 75mm
Nikon Zf /voigtlander NOKTON 75mm

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