撮影してから思っていた以上に日が経ってしまった。あたためておいて後出ししようなんて魂胆はない。パソコンの前に座り「サクラスーパースライダー」と打ち込む時間がなかっただけ。仕事を終え帰宅してパソコンを開く前にウイスキーのボトルキャップを開ける方を優先してしまったのは間違いないが。
河津桜が見頃を迎える頃、幾度も足を運びこの日を待っていた。
桜越しに見る滑り台。そこを無邪気に滑り降りる子供たち。そんなシチュエーションを撮りたい欲に駆られた。日が出て少し経った頃からお昼ご飯前までの数時間、桜を見ながら鳥のさえずりを聞き、シャッターボタンを押し繰り返す。趣味あるいは、好きを突き詰めていくと文字通り「時間を忘れる」ゾーンに入ることができる。おそらく、時間に追われている現代人には必要不可欠な息抜きなんだと思う。
滑り台を軸にグルグル歩いた。
「滑り台から見る桜はどうなんだろう」と思うのは当然な思考。
誰もいないし、滑ってみた。少し進んでカメラを構え、また少し滑って止まってピントを合わせる。
もちろん誰もいない公園にローラー滑り台のカラカラ音が響く。
撮りたいシチュエーションも撮り、滑り台からも桜を見れた。満足して帰宅し、その後仕事に出かけて再度帰宅してやっとMacBookを開き撮影した写真を見て驚愕した。
早朝の誰もいないであろうと思っていた公園には私以外にも独り時間を楽しんでいた人がいたのだ。しかも私がカメラ片手にローラー滑り台を滑りながら撮った写真に写っているということは、確実に私を見ていたはずだ。見ず知らずの彼にとんでもないカオスな状況を見せてしまった。やれやれ、界隈で噂にならないように願うばかりだ。
その彼からのDMを密かに待っているのはここだけの話。