起床後すぐに身支度をし、カブの鍵とカメラを持って家を飛び出す。
朝日を浴びている色鮮やかな木々を撮るために。向かうは印旛捷水路。(※1)
レンズはみんな大好き中望遠マニュアルフォーカスレンズ、voigtlanderのULTRON 75mm F1.9のみ。
スーパーカブのスロットルを優しくひねる。速度を上げれば上げるほど、体に当たる風が冷たい。引き返してお家でヌクヌクしたい気持ちと、私が描く景色を写真に残したい欲求が脳内で葛藤する。いいや、寒いは今だけ。今日撮らなければ次の休日が晴れる約束はどこにも無い。後悔した自分に「選ぶ自由があったから」なんて言い訳したくない。
ブツブツ言いながら現地着。
やべーさみー。冷えた体を待っていたのは水辺の気温。シャッタースピードを変えたいのに指先がヒエッヒエで動かない。真鍮製でもエンプラでも、こんなシチュエーションだと質感とかどうでもいい。最後の力をふり絞り、操作できるか否か。
さてさて。秋の早朝は川霧が幻想的に演出してくれる。サスペンス映画のワンシーンのように。もちろんこの後、事件は起きない。
橋の反対側にやってきた。この赤い橋は見覚えのある方も多いのではないか。
カメラを構えていると「何してるんですか」と双眼鏡を持った方に話しかけられた。常套句で返し、あなたは何を、と尋ねてみた。するとライフルを構えるような仕草をし「鴨を捕獲してる。あそこに浮かんでる鴨が見えるだろ?」と。彼らはハンターだった。詳しい話は聞けなかったけど、おそらく生態系の調査かと。
思い返してみれば、橋の反対側にいた時に鳥の群れが現れた。その飛び立つきっかけは発砲だったのかもしれない。鳥が群れをつくって空を羽ばたいているのがこの光景にスパイスを与えてくれたと思う。
水辺に30分もいると指先の感覚もいよいよ無くなった。フォーカスリングも思うように回せないし、シャッターボタンをタイミング良く押せない。だけどそんな時は、スーパーカブのエンジンで暖をとる。エキパイからエンジン付近に手をかざす。じんわりとゆっくりと。心まで温まる。
いずれスーパーカブを被写体に撮ってみようと思う。乞うご期待。
※1 印旛捷水路とは千葉県北部にある北印旛沼と西印旛沼を結ぶ人工的に掘削した水路。1966年、掘削工事中にナウマンゾウの化石が発掘したらしい。参考までに。
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